鈴木日出男さん追悼

一昨日から山口県の萩に校務で出張していて、初めての萩ツアー自体を楽しんでいたのだが、昨日、思いがけず筑摩書房の編集部からメールが届き、鈴木日出男さんの訃報を知った。お年は75歳だったから、たしかに何が起きてもおかしくないのではあるが、ほぼ毎年、筑摩書房の高校生用の国語教科書の編集会議でお会いし、今年もお元気そうだっただけにびっくりした。思えばもう25年も前からお付き合いいただいていたことになる。最初に筑摩の「国語」編集会議に出たときにおられたのは、猪野謙二さん、秋山虔さん、分銅惇作さん、鈴木日出男さん、高校の先生では桑名靖治さん、鈴木醇爾さんたちであった。そのうちもう猪野さん、分銅さん、桑名さん、鈴木醇さんが鬼籍に入られ、そして今度は鈴木日出男さんまでが……。編集会議での鈴木さんのことを思い出すといろいろあるが、いちばん記憶に残っているのは懇親会でちょっとゴタゴタしたことがあって、みな深酒した帰り、電車もなくなって新宿駅前でタクシー待ちをしていたときのこと。ひょんなことからタクシーを待って並んでいる前の客とけんかになった。カッとなった鈴木さんが殴り合いをしようとして、それを桑名さんとともに抱きとめて止めたことがあった。ふだんはとても穏やかだっただけに意外に熱い源氏学者だなあと思った。あれが一、二年目のときだから、やはり四半世紀近く前の出来事でる。まだ鈴木さんは50歳になるかならないかというときだった。東大教授をつとめられて、成蹊大に移られ、悠々自適になって学者としての最後のまとめに入ろうかというところだったろう。師にあたる秋山さんの悲嘆を思うとつらい。心よりご冥福をお祈りします。

岩波百年史も出ました

IMG_0007同じ日の発売になったようですが、「物語岩波書店百年史1 「教養」の誕生」も見本が届きました。店頭にもすでに並んでいるそうで、滑り込みセーフというしめくくりになりました。こちらは全9章立てで、すべて書き下ろしとなっています。
カバーの写真は岩波書店旧館の外壁をつたってはえたツタの葉ですね。歴史ある書店の創生期を、いくつかの角度から切り取って描き出すという作業をしてみました。なるべくむずかしい言い回しを避けて書いたつもりですが、果たしてどうでしょうか。 

戦争文学史、出ました

IMG_0005集英社から「コレクション戦争×文学 別巻 〈戦争と文学〉案内」が出ました。第1部の「〈戦争と文学〉の150年」を宗像和重さん、中山弘明さん、中谷いずみさん、坪井秀人さん、陣野俊史さん、杉江松恋さん、大森望さんとともに担当しています。
第2部の長篇作品紹介のほか、第3部の年表が詳細で、8000点以上の作品をリストアップしています。もとは平成期もふくめて15000点近いリストを作成したと聞いています。徹底して原典にあたる調査を行ったもので、この年表はまず一見の価値があります。そしてぜひ 「〈戦争と文学〉の150年」もお読みいただければ幸いです。

高麗大学校文科大学との交流

9月28日、朝から丸一日、高麗大学校文科大学の先生たちをお迎えして、文理学部との学術交流が行われました。協定更新にともなうイベントとして、互いの紹介を兼ねた研究発表会を開催したのですが、ざっとこんなメニュー。朴吉聲(PARK Gil Sung、社会学)「創造性の大規模生産─K-Popの生産、パフォーマンス、拡散」、久保田裕之(KUBOTA Hiroyuki、社会学)「家族の変化と居住レジーム―日本のシェアハウスの事例から」、張東天(ZANG Dong Chion、中国学)「中国東北地域鉄道附属地の近代都市形成と文化混種」、松重充浩(MATSUSHIGE Mitsuhiro、中国近代史)「日本の関東州統治と中国人顧問―劉心田を事例として―」、李亨大(LEE Hyung Dae、韓国文学)「辭説時調の喜劇性」、佐藤至子(SATO Yukiko、近世日本文学)「合巻研究の現在」、鄭炳浩(JUNG Byeong Ho、日本文学)「朝鮮半島の植民地日本語文学と日本文学史」、高榮蘭(KO Youngran、近代日本文学)「文学空間の住民とは誰か―2013・日本(語)の近現代文学から―」、金子明雄(KANEKO Akio、近代日本文学)「近代日本文学研究におけるグローバル化とは何か」、朴尚洙(PARK Sang Soo、中国近代史)「中国近現代国家権力の変遷」、小浜正子(KOHAMA Masako、中国近現代史・ジェンダー史)「中国農村における計画出産の展開―二つの農村に見る政策の浸透過程」、そして総合討論でした。来日された先生たちのテーマに合わせた布陣なので、バラバラなように見えますが、リンクするところもあり、話題に事欠かない楽しい一日となりました。関係の先生方、スタッフのみなさん、ありがとうございました。

コットンベイブ

震災後の2012年から福島のいわき市で綿花が栽培されています。放射能に汚染された大地の除染作業がつづいていますが、どうやったら復興できるのか。さまざまな思索の末に放射能の吸収の少ない綿花の栽培にいたったとのこと。その綿花を使ったフクシマオーガニックコットンが出荷されています。そしてそのコットンの種と綿で作ったのがコットンベイブの人形。綿の触感を楽しむとともに種から育ててみませんかというわけです。いわきに避難してきている女性たちが一個一個、内職で手作りしています。人形の左にあるのはそのコットンとアメリカのオーガニックコットンをドッキングさせて作ったTシャツ。右はパンフレットです。詳細はこちらへ。可愛いし、肌触りのいいものです。この機会に有機農法によるコットンにふれてみてください。サイトに注文の仕方も出ています。
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