一昨年、神奈川県立近代文学館で開催された堀田善衞展が堀田さんの故郷、富山県高岡市の美術館に場所を変えて再度、開催されました。前と同じく企画編集役としてかかわったのですが、その縁で開催期間中に高岡市美術館で講演をしてきました。

今回の展示は内容的にはほぼ同じなのですが、文学館と美術館という個性の違いや空間の広さやしきりの違い、そして何よりも横浜の空気と富山高岡の空気の違いが不思議に展示に現れていたのを感じました。同じ展示物でも展示の方法によって異なって見える、そういう面白い体験をすることができました。そしてこれまで堀田に距離をおいていたり、関心を表に出してこられなかった富山の方たちが予想以上に強い興味を示し、神奈川の時以上に多くの入館者に恵まれたのも驚きでした。

ぼくが講演したときも150人の部屋いっぱいにあふれ、廊下におられる方もいました。これは講演の内容云々ではなく、ジブリが敬意を抱いた堀田善衞とは何者だろうという素朴な好奇心から、これまで堀田好きとは言えなかったけれど、時代も変わったので前から好きだったと言い出した方たちまで、いろいろな人たちが動き出していると感じさせられました。この日、伏木港や高岡市内を歩き回り、堀田の幼少年時代をしのんで散歩しましたが、そこに新たな胎動を見たのが大きな収穫です。SN3J0107