最近、金子洋文という作家に関心をもって追いかけている。いうまでもなく「種蒔く人」や「文藝戦線」の同人で、初期プロレタリア文学運動の担い手として覚えていたのだが、このひとの人的ネットワークが面白い。もちろん、小牧近江をはじめ、青野季吉や前田河広一郎らプロ文派との関係が強いのは言うまでもないが、「文党」という雑誌に集まった今東光、村山知義、サトウハチローと関わり、今東光が喧嘩別れしたはずの菊池寛や直木三十五とも文藝家協会や聯合芸術家協会を通じて親交を結んでいた。劇作家としても活躍し、築地小劇場などの新劇、市川猿之助らの歌舞伎、花柳章太郎・水谷八重子らの新派、沢田正二郎の新国劇のいずれにも戯曲を提供し、劇団を越えて新たな演劇の機運を生み出したひとりでもある。このあいだの日本近代文学会大会のときに、今村忠純さんに久しぶりにお目にかかったので、金子洋文について質問し、懇親会では高橋秀晴さんに紹介していただいた。そのおかげで秋田市立土崎図書館に所蔵されている「金子洋文資料目録」を高橋さんから頂戴することができた。これは遺族から寄贈された資料のリストなのだが、全部で278ページにもなる大部。書簡や原稿、切り抜きなどもあって、これを見ていくと、金子という作家の特異なポジションが浮かび上がってくる。文学と演劇・映画など他ジャンルの交差を考える上でも、いまマイブームは金子洋文になりつつある。さらにご存知の方がいらしたら、ぜひともご教示をお願いしたい。