卒業式の翌日、韓国の成均館大学校へ。千政煥さん、韓基亨さんたちとお目にかかる。韓国近代文学の研究者たちとの会合が目的でした。韓国の日本近代文学研究者とはもちろん知り合いも多いのだけれど、あえて韓国近代文学研究者と会って話をしようという試みです。たとえば、英文学でいうと、日本の英文学研究者とイギリスの英文学研究者が話し合うことはあるかもしれませんが、イギリスの英文学研究者と日本の日本文学研究者が話し合う機会はめったにないと思います。なぜでしょうか。言語の違いはもちろんある。コミュニケーションに不自由ですし、専門が違う。しかし、互いの言語や文化、歴史の違いを前提にして話す場合と、一方の言語・文化について勉強しているもの同士が話し合う場合とでは、まったく異なることがあるはずです。まして日本と韓国の場合は、歴史的に帝国と植民地の関係があり、一方が他方に言語を強制した歴史もある。韓国近代文学の成立過程には、否応なく日本語の強制がからみついている。決して対等とは言えない歴史をもって、しかし、いまやWBCを見ても、キム・ヨナ、浅田真央の対決を見ても、すばらしい名勝負をつづける双方の近代文学研究が対話したらどうなるのか。もちろん、実際にはあくまでも偶然による個人的な関係に過ぎないのですが、そんな個人のつきあいのなかにもいろんなことが含まれてくる。誤解や錯覚、期待やずれなどをお互い楽しんでみようではないかという企画で始まったのでした。
むずかしいことはさておき、去年暮れには木浦に行ったわけですし、韓国は何度目かの旅行だったのですが、ゆっくりソウル市内を回るのは数年ぶり。とにかく街がきれいになり、タクシーも車内がきれい、運転手さんも愛想がいい。道行く若い人たちのファッションや顔つきが華やかで、ほんとに美男美女が多い。そうだろうと予期してはいたのですが、予想以上でした。
成均館大学校は、何と600年の伝統があるとか。儒教の学校だった時代から数えてということなので、日本でいうと、比叡山の学舎が大学になったようなものでしょうか。超モダンでゴージャスな校舎と、もはや伝統を越えて博物館的な建物とが共存する大学でした。

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