下高井戸シネマでドキュメンタリー映画特集の前夜祭。今回は映像民俗学をとなえてきた姫田忠義さんの「遙かなる記録者への道〜忘れられた日本の文化〜」の上映と、姫田さんご自身による講演。ほんと恥ずかしいのだけれど、姫田さんのことも映像民俗学についてもあまりよく知らなかった。何しろ優れたドキュメンタリー映画を観る会の飯田光代さんのサポーターを任じているものとして前夜祭にかけつけるのは当然と思ってやってきたのだけれど、すっかり脱帽しました。そうか、こういう映画人もいたんだなとあらためて敬意を抱きました。よく考えたら「イヨマンテ」とか「越後奥三面」といったドキュメンタリー映画の記憶には残っていたけれど、そのときはだいぶ昔で、誰が撮っているか覚えていなかった。姫田さんは、戦後、予科練から復員して、あれこれさまよったあげくに宮本常一に師事、それからひとびとの暮らしを映画に撮るようになったという。日本の各地を歩きまわり、60年代以降は経済成長によって失われていく各地の生活文化を撮りつづけてきた。それから半世紀。結果的に姫田さんが残した映像が歴史をとらえなおす貴重なデータとなった。焼き畑農業がどんな意味をもっていたか、海の民、山の民のなかにずっと残っていた技能や習俗、自然とのつきあい方、信仰と歴史感覚にいたるまでが映像を通して伝わってくる。すでに80歳になる姫田さんが登場してひときわ会場は拍手がもりあがった。撮る側と撮られる側の関係を大事にし、けっして頭が高くならない姫田さんのすがたにみな心うたれたと思います。大雨のなかだけど、やはり行ってよかった。
それにしてもこのドキュメンタリー映画特集ももう21回。10年やりつづけたことはすごいと思う。飯田さんというひとりの自称「主婦」が切り開いたものの大きさに頭が下がります。素人っぽさをなくさない彼女に、最後まで拍手は鳴りやみませんでした。そして下高井戸シネマも10周年。友の会会員に10周年のご挨拶と、この10年の上映作品の全リストをパンフレットにし、さらには今後10年有効の無料招待券が送られてきました。かわいいポストカード付き。全部スタッフの手作りだそうですが、これからもう10年は頑張りますという決意に、これまた敬服。こういう映画館の街に通っていることに誇りを覚えました。