DVDで映画版「魂萌え!」を見ました。すごくいいじゃないですか。阪本順治監督はその昔の「どついたるねん」から好きだったけれど、「傷だらけの天使」の連作で大好きになり、「顔」「新・仁義なき戦い」でさらにはまりました。ところが「KT」まではよかったのですが、「ぼくんち」「この世の外へ クラブ進駐軍」で首をかしげることとなり、「亡国のイージス」も真田広之や中井貴一はいいけれど、あの寺尾聰の艦長はありえないし、その妻役の原田美枝子にいたってはこれだけいい女優を使ってこれかという疑問を抱かされていたのでした。そんなわけでちょっと腰の引けたまま「魂萌え!」を見逃すことになったのですが、やはりこれは見ておくべきだった。「半落ち」や「雨あがる」の寺尾聰にあえて今回のような役柄を与え、「無能の人」で〈再発見〉されながら放置されていた感のある風吹ジュンを、こんなに魅力的な50代の女性に描くなんて。そして60代の愛人を演じる三田佳子!この大女優を使いたかったんだろうなぁ。女優の老いと栄光とをともども見せながら、かつ堂々たる世界になっている。阪本監督の残酷さとやさしさが両方出ています。おまけに加藤治子の怪演も引き出して、三世代の女優をならべてみごとに描き分けているところがいい。ほかにこんなふうに描ける監督がいるでしょうか。「傷だらけの天使」の原田知世、「顔」の藤山直美と大楠道代についで、「魂萌え!」の風吹ジュン、三田佳子は記憶されるに値すると思います。しかし、それにしても最後にだれも頼らず、だれにも頼られずに生きていくことを選んだ風吹ジュンに映写技師の仕事をやらせ、早稲田松竹の映画館でデ・シーカの「ひまわり」のソフィア・ローレンを上映させる!もう、このラストに至っては涙なくして見られませんでした。「ひまわり」が大仰なほどな通俗メロドラマで、にもかかわらずソフィア・ローレンがすばらしく、この映画の振幅がひときわ効いています。ぜひ、「魂萌え!」のサイトで予告編なりとも見てください。