IMG_0696亡くなられた秋山駿さんが勝又浩さんと監修し、私小説研究会が編集した「コレクション私小説の冒険」というシリーズが始まった(勉誠出版から)。『苦役列車』の作家西村賢太の推薦が帯についている。鈴木登美さんがかつて『語られた自己―日本近代の私小説言説』(邦訳、岩波書店、2001年)で明らかにしたように、「私小説」は小説のサブジャンルではない。それは日本の近代文学を取り巻く限定的な条件のもとで生まれた作者と読者との黙契から成る特殊形態なのだが、しかし、歴史的に積み重ねられることによって独自な洗練と複雑化をとげてきた。いったんその契約のなかに入れば、これはこれでかなり奥行きも面白さもある。このシリーズはアンソロジーのかたちでその全貌を探ろうということらしい。最近、西村賢太がむりやり再評価して復活した藤沢清造をはじめ、吉野せい、古木鐵太郎、小山清などが収められている。なかでも詩人の山之口貘の小説が入っているのが注目。つづいて今月には二巻目も出ている。