ちくまプリマー新書で出た上原善広『路地の教室 部落差別を考える』を読んだ。『日本の路地を旅する』(文藝春秋)を読んで関心をもっていた著者なので、数冊まとめて購入し、机のわきに並べている。プリマー新書は読者層を中学・高校生ぐらいに設定しているから、文章も平易だし、叙述も読みやすい。しかし、書かれていることは素晴らしく重い。その重いことが軽やかに書かれているのがいい。被差別部落については、島崎藤村、野間宏について考えていたときからずっと頭にあって、『部落解放』などの雑誌をとったり数多くの関係書を読んできた。そんななかで中上健次の「路地」という言葉を手がかりに全国の「路地」を歩き回り、差別のなかから差別自体を考えているこの本に会って納得もできたし、ひとつの明かりが見えて来たように思う。これは被差別部落を例においている本ではあるが、あらゆる差別、民族やジェンダー、年齢、障がい、性的マイノリティなど、さまざまな差別にもつながっている本だと思う。解決策を示しているのではない。差別の現実のなかで生きる、生きぬくことがむしろ推奨されている。「あとがき」を見たら、筑摩書房の金子千里さんの名前が謝辞とともに掲げられていた。金子さんはかつて筑摩の「国語」教科書編集に携わっていた同志。いい本が出来ましたね!